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遺産相続 法律用語集『あ行』[POSTED]:2017-10-22

あ行 相続用語一覧

後継遺贈あとつぎ-いぞう/こうけい-いぞう

遺言の効力が発生した後に受遺者Bが死亡した場合に、受遺者Bの相続人に遺贈の目的物を相続させずに被相続人の指定する別の受遺者Cに遺贈の目的物を与える遺贈のことです。受遺者の受ける権利をある条件の成就、または期限の到来によって他の特定の者に移転させるものです。後遺遺贈とは一種の停止条件付ないし期限付遺贈になります。

後継遺贈について民法は何ら定めていませんが、判例は後継遺贈の有効性を認めています。もっとも相続開始後の不安定や手続の煩雑といった弊害があります。現行信託法で認められた後継遺贈型受益者連続信託を利用すれば後継遺贈と同様の効果が期待できます。相続税の課税関係については実務上、明らかになっていません。

家制度いえせいど

家制度のもとでは統率者である「戸主」とその他の家族である「家族員」から構成される家父長制家族をモデルとし、戸主が家族の身分行為に対する同意権などを通じて家族員に対する支配権を持ち、家の財産は戸主に帰属します。家制度のもとでは長男単独相続制を原則とする家督相続により戸主の地位と家産を代々承継させることで家制度の維持が図られましたが、第2次世界大戦後に家制度は憲法第24条に反するとされ廃止されました。

遺骨いこつ

死亡した人間の骨のことで、私法上は「物」としての所有権は認められるものの目的は埋葬、供養、祭祀のためです。故人の遺体や遺骨は祭祀財産とはいえませんが、礼拝や供養の対象となりますので、祭祀財産に準ずるものとみて祭祀を承継する者が所有権者と考えられています。分骨についても決定権は祭祀承継者にあります。祭祀承継者は、他の相続人などが反対しても、分骨を自分の意思で決定することができます。祭祀承継者以外の者は、たとえ肉親であっても祭祀承継者の承諾なしに分骨はできません。

遺言いごん/ゆいごん

遺言者の死後の法律関係を定める最終意思の表示のことで、一定の方式に従う必要があります。要式行為で方式に違反する遺言は無効となります。

財産上の地位の承継だけでなく身分法上の地位ないし権利義務の変動を目的とすることがあります。遺言の財産的側面のうち遺言者の財産的地位の承継にかかわる部分が「遺言による相続」にあたります。相手方のいない単独行為でいつでも撤回でき、遺言者の死亡前には何らの法律上の権利を生じさせません。遺言として有効になるのは一定の法定事項(遺言事項)に限られます。

遺言事項(法定遺言事項)いごん-じこう/ゆいごん-じこう

遺言できる事項は、民法、商法、信託法、一般社団・一般財団法所定および法解釈上できるとされている事項(認知、未成年後見人の指定、後見監督人の指定、遺贈、遺留分減殺方法の指定、寄附行為、相続人の廃除及びの取り消し、相続分の指定及び指定の委託、特別受益者の持ち戻し免除、遺産分割方法の指定または指定の委託と遺産分割の禁止、共同相続人間の担保責任の指定、遺言執行者の指定及び指定の委託、信託の設定など)に限られており、それ以外の事項を記載しても一般に無効で法的効力は生じません。

遺言執行者いごん-しっこうしゃ/ゆいごん-しっこうしゃ

遺言の内容を実現するために一定の行為を必要とされる場合(例えば、遺贈、認知、相続人の廃除など)や遺言の執行が相続人の利益に反する場合など、相続人が遺言を執行できないため他の者に執行させたほうがよい場合に遺言執行の目的のために特に選任された者であり、遺言者に代わって遺言の内容を実現します。

遺言による指定または指定の委託か家庭裁判所による選任によって決定し、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有することになります。遺言執行者は相続人の代理人とみなされ、また遺言執行者に就任するか否かは、その者の自由です。

遺言執行費用いごん-しっこうひよう/ゆいごん-しっこうひよう

準備手続きとしての遺言書の開封・検認の費用、財産目録調整の費用、相続財産管理費用、執行者の報酬、その他執行に関連する訴訟費用など、遺言執行にともなう費用で、相続財産より負担することとされます。

遺言書いごんしょ/ゆいごんしょ

法定の方式に従って遺言を記載した書面で、遺言者(被相続人)の自由な最終意思を確保するために民法では遺言を要式行為としています。

遺言書のない遺言はそもそも法律的に無効とされます。民法の規定する遺言の方式には、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言の3種類があり、各方式に定められている要件を具備していない限り無効です。

遺言信託いごん-しんたく/ゆいごん-しんたく

遺言により信託を設定することを指します。信託銀行の提供する遺言の作成・執行に関するサービスを指すこともありますが、これは信託とは本来的に無関係のことです。信託は委託者・受託者間の契約により設定されることが多いものの、遺言によって設定することもできます。遺言の記載事項は、遺言者の財産のうち全部または一部を信託する旨、その目的、管理処分方法、受益者、受託者、信託報酬の額または算定方法などです。公益的な目的のために財産の一部を活用してほしい場合(目的信託)や遺言者死後の親族の状況などに応じて、受託者の裁量により財産の使途・処分方法を決定することを望む場合(裁量信託)などがあります。通常、遺言者の死亡時に信託の効力が発生します。契約による信託と異なり、委託者の相続人は委託者の地位を承継しません。

生前信託で遺言信託を代用することもできます。生前に受託者を決め、受託者との間で信託契約を締結して財産の全部または一部を信託しておくものの、死亡までは自己が当該財産からの利益を受け、死亡時に信託契約の定めにより受託者が遺族などに給付を行うものです。死亡までは信託宣言によって自己が受託者を兼ねることも可能です。

遺言認知いごん-にんち/ゆいごん-にんち

遺言で認知(摘出でない子について、その父または母との間に、意思表示または裁判により親子関係を発生させること)ができます(民法第781条第2項)。

認知をすることを妻には言いにくい場合も、愛人との間の子供を遺言によって認知をすることもできます。

遺言年齢いごん-ねんれい/ゆいごん-ねんれい

15歳に達した者は遺言をすることができます(民法961条)。

遺言能力いごん-のうりょく/ゆいごん-のうりょく

遺言を単独で有効に行うことができる法律上の地位または資格のことです。遺言を行うには民法上の完全な権利能力までは必要ではありませんが、意思能力(自らが作成しようとする遺言の内容を正確に理解し、その効力が生じることによる結果を弁識しうるに足りる能力)は必要です。15歳に達した者は意思能力があるとされています。

遺言作成時に遺言能力を備えている必要がありますが、15歳に達していても意思無能力ならば遺言は無効となります。事理を弁識する能力を一時回復した成年被後見人も、2人以上の医師の立会いを得て、単独で有効な遺言をすることができますし、被保佐人、被補助人の遺言は保佐人、補助人の同意を得なくても有効です。

遺言方式の緩和いごんほうしきの-かんわ/ゆいごんほうしきの-かんわ

特別な状況にあり、普通方式で遺言を行えないような場合に、普通方式の要件を緩和させた方式である特別方式で遺言を行うことができます。

もっとも遺言者が普通方式で遺言することができるようになったときから6か月間生存するときは、特別方式の遺言の効力がなくなります。

遺産いさん

相続財産

遺産から生じた果実いさんからしょうじた-かじつ

相続開始後に生じた果実及び収益については、相続財産そのものではありません。そのために当然には遺産分割の対象にはならないのが原則です。

さらに遺産から生じた果実及び収益の分配については、民事訴訟上の「不当利得返還請求」として提起されますが、例外的に当事者全員が合意をした場合には遺産分割の対象に含めることができます。

遺産管理いさん-かんり

共同相続により遺産共有状態が生じているときの遺産の管理方法は、民法の共有に関する規律に従うことになります。相続財産に対する保存行為は、相続人各自が単独で、これを超える利用行為・改良行為は相続分による過半数で決することになります。

遺産に属する個別財産の処分は、原則全員の同意があれば可能です。共有状態の相続財産の管理について共同相続人間で意見の対立がある場合など適正な遺産管理ができない場合は、審判前の保全処分として家庭裁判所の申立てまたは職権で遺産管理者の選任を命じることができます。ただしこの選任は遺産分割審判の申立てがあったときに限ります。遺産管理者には不在者の財産管理人と同様の地位、つまり相続人の法定代理人としての地位が認められ、善良な管理者の注意をもって遺産の管理事務を遂行する義務が課されます。

遺産共有いさん-きょうゆう

共同相続では共同相続人全員によって遺産が包括的に承継され、遺産分割がなされるまで共有に属することになります。

この共有の意味を判例は物権法上の共有としていますが、合有と説明したほうが適切な場合もあります。今日では遺産共有として、各共同相続人が遺産分割前の相続財産にどのような権利を持つかに関する具体的な検討にも焦点があてられています。

遺産取得税いさん-しゅとくぜい

相続税の課税の方式の1つで、遺産を取得した者に対して取得財産を基準にして、課税を行うことです。担税力に即した課税を行うことができる反面で、遺産分割の仕方によって税負担が異なり、課税の公平が害されるなどの短所があるとされます。

遺産税

遺産税いさんぜい

相続税の課税方式の1つで、被相続人の遺産それ自体に対して課税することです。相続人数や遺産分割の仕方の違いによって税負担が左右されず、税務の執行が容易です。反面で、取得者の担税力に応じた税負担の分配や遺産分割の促進の観点からは不十分といわれます。

遺産取得税

遺産分割いさん-ぶんかつ

共同相続において、共同相続人らが共有している遺産を分割して、遺産共有を解消して個々の相続財産の帰属先を決定することです。共同相続人は、遺言で禁じられた場合を除き、いつでも協議によって遺産分割をすることができます。

遺産分割の方法はまず、遺言による分割方法の指定がある場合はそれに従い(指定分割)、指定がない場合は共同相続人による協議(協議分割)により、また協議が成立しない場合は裁判所による分割(審判分割)が行われます。遺産分割がされると相続開始時に遡って効力を生じますが、第三者の権利を害することはできません。なお、遺産分割の対象は「遺産分割時の相続財産」であって、「相続開始時の相続財産」ではありません。

遺産分割協議いさんぶんかつ-きょうぎ

協議分割

遺産分割審判いさんぶんかつ-しんぱん

審判分割

遺産分割調停いさんぶんかつ-ちょうてい

調停分割

遺産分割の瑕疵いさんぶんかつの-かし

協議分割の成立に関する共同相続人の意思表示が詐欺・脅迫に基づくものであった場合や意思表示に要素の錯誤があった場合には、無効・取り消しを主張することができます。意思表示に瑕疵があったことについて相続人間に争いがなければ分割協議のやり直しを行うことになりますが、争いがある場合には家事審判又は裁判に移行します。

遺産分割の禁止いさんぶんかつの-きんし

遺産分割は、被相続人の遺言による分割禁止、共同相続人の協議(または調停)による分割禁止、家庭裁判所の審判による分割禁止によって一定期間禁止することができます。禁止期間が終了しても、協議や審判により更に不分割を継続させる事は可能ですが、全員の合意があればさらに5年の範囲内で不分割とすることも可能です。

遺産分割方法の指定いさんぶんかつほうほうの-してい

遺言により被相続人が分割方法を指定した場合は分割方法が遺言で指定されただけで、指定によって当然に分割の効力が生じるのではなく、その後の遺産分割手続(協議・調停または審判)が行われる必要があります。分割方法の指定があっても、共同相続人の協議によって指定と異なる分割をすることは可能です。共同相続人の合意が被相続人の意思に優先するからです。分割方法の種類としては、現物分割、換価分割、代償分割があります。

現物分割 換価分割 代償分割

慰謝料請求権いしゃりょう-せいきゅうけん

被害者が精神的損害に対する慰謝料を請求する権利ですが、不法行為の直接の被害者が死亡した場合は、遺族たる父母、配偶者、子にも固有の慰謝料請求権が発生します。

損害賠償請求権

遺贈いぞう

遺言によって無償で財産的利益を他人に与える行為で、遺贈によって利益を受ける者を受遺者といいます。胎児や法人も受遺者になれますが、相続欠格者はなれません。遺贈には条件、期限、負担をつけることができます。受遺者はいつでも遺贈を放棄することができ、その効果は遺言者死亡時に遡って効力を生じます。被相続人が死後に財産上の利益を無償で譲渡する点で贈与と似ていますが、贈与は贈与者と受贈者との間の契約で生前処分であり、遺贈は遺贈者の単独行為であり死後の処分である点に違いがあります。遺贈には遺産の全部または一部を一定の割合で示してする包括遺贈と特定の財産についてする特定遺贈とがあります。

包括遺贈 特定遺贈

遺族給付金いぞく-きゅうふきん

国民年金、厚生年金、各種共済組合などの被保険者、組合員および旧軍人・軍属などの遺族に支払われる現金給付のことです。受給権者の範囲や順位が法定されていて、法律によって与えられた固有の権利とされているため相続財産には含まれません。

遺族年金 遺族扶助料

遺族年金いぞく-ねんきん

公的年金制度において、一定の要件を満たす被保険者、またはかつての被保険者であった者が死亡したときに法律の定める一定の要件を満たす遺族に支給される年金給付のことです。国民年金では遺族基礎年金、厚生年金では遺族厚生年金、各種共済組合では遺族共済年金といい、受給要件などはそれぞれの法律で定められています。遺族の生活保障を目的とし、受給権者の固有の権利とされるので相続財産には含まれません。未支給年金がある場合も同様です。

遺族扶助料いぞく-ふじょりょう

恩給制度における遺族給付のことです。年金である扶助料(普通扶助料、公務扶助料、増加非公死扶助料、特例扶助料)と一時扶助料(一般の一時扶助料と旧軍人一時扶助料とがある)とに分かれ、ともに支給される遺族が法律で定められています。遺族の生活保障を目的とし、受給権者の固有の権利とされるので相続財産には含まれません。

遺体いたい

遺体・遺骨についても所有権を観念でき、有体物として所有権の客体となりますが、性質上制限を受け埋葬管理・祭祀供養の範囲においてのみ所有権が認められます。所有権の承継については当然に相続人に帰属するというわけではなく、祭祀を承継する者が所有者と考えられています。

著しい非行いちじるしい-ひこう

被相続者に対し著しい非行を行った者は廃除対象者となりえます。著しい非行とは人為的信頼関係を破壊する程度に重大なものをいいます。

非行

一身専属権いっしんせんぞくけん

その権利の性質などから特定の者のみが行使し、または享有できる権利のことです。行使上の一身専属権と帰属上の一身専属権とがあります。前者は権利を行使するにつき権利者の意思にかかわるもので、慰謝料請求権などがこれにあたります。後者は相続の対象とならず、権利の帰属につき権利者の身分などと不可分の関係にあるもので、扶養請求権などがこれにあたります。

行使上の一身専属権

一般隔絶地遺言いっぱんかくぜつち-いごん/いっぱんかくぜつち-ゆいごん

遺言の特別方式(一般社会から離れた場所(隔絶地)にいる場合)の1つで、伝染病で病院に隔離された人が遺言を作る場合で、警察官1名と証人1人以上の立ち会いが必要となります。裁判所の確認は不要です。

船舶隔絶地遺言 →隔絶地遺言

一般危急時遺言いっぱんききゅうじ-いごん/いっぱんききゅうじ-ゆいごん

遺言の特別方式(危険な状態が目の前に迫っている場合)の1つで、病気やけがで臨終の時が迫った場合で、証人3人以上が立会い、一人が口述し全員に読み聞かせ行います。20日以内に証人か利害関係人が家庭裁判所に請求し確認を取らなければ、遺言の効力は発生せず、家庭裁判所はその遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ確認することができません。

難船危急時遺言

遺留分いりゅうぶん

一定の相続人が遺産について法律上必ず留保されなければいけないとされている一定割合、つまり遺言によっても処分することができない遺産の割合のことです。遺言による遺産処分は被相続人の自由に行うことができますが、被相続人の全財産が相続人以外の第三者に贈与されたり遺贈されたりすると、相続人は生活に困窮する事態になりかねませんから、一定範囲の相続人に相続財産の一定割合の取戻し権を認めることにしています。この割合を遺留分、このような相続人を遺留分権利者といいます。配偶者、第1・第2順位の相続人が遺留分権利者にあたり、第3順位の相続人(兄弟姉妹)は含まれないので注意が必要です。遺留分は第2順位だけが相続人の場合は算定の基礎となる財産の3分の1でそれ以外は2分の1となります。

自由分

遺留分減殺請求いりゅうぶん-げんさいせいきゅう

遺留分を侵害された者(遺留分権利者)が遺留分を侵害した者に対し、遺留分を侵害した相続分を取戻す根拠となる権利のことです。権利行使期間は、遺留分権利者が遺留分の侵害を知った時から1年間で、相続開始時から10年間です。遺留分権利者は遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び相続開始前の1年間になされた贈与の減殺を請求し、その効力を否定することができます。行使は訴えによらなくとも、減殺請求の意思表示をするだけでよく、通常は内容証明で通知することになります。この意思表示をすれば、減殺の効力は発生し、遺留分の範囲で侵害をしている受遺者または受贈者の権利は効力を失います。侵害した者が遺留分の返還に応じてくれない場合は、通常の民事訴訟や遺産分割の審判を申し立てることになります。

遺留分権利者いりゅうぶん-けんりしゃ

遺留分によって利益を受ける相続人を指し、配偶者、第1順位(子)、第2順位(直系尊属/親・親の親)の相続人が遺留分権利者にあたり、第3順位の相続人(兄弟姉妹)は含まれません。胎児も生きて生まれれば、子としての遺留分権利者となります。相続欠格、廃除、相続放棄によって相続権を失った者については遺留分がありません。ただし相続放棄と違い、相続欠格、廃除の場合には欠格者及び被廃除者の代襲相続人が遺留分権利者となります。

遺留分放棄いりゅうぶん-ほうき

相続開始前に遺留分権利者が家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄することです。遺留分減殺請求権を行使するかどうかは個々の遺留分権者の自由に委ねられているため、その意味で遺留分を放棄することも個人の自由とされます。もっとも無制限に許すと、被相続人もしくは他の共同相続人から、あらかじめ遺留分を放棄するよう強要されるおそれがあるため、裁判所の許可の必要とされています。家庭裁判所は、遺留分権利者の意思や放棄の事情を考慮して、放棄の可否を判断します。

相続開始前に絶対放棄できない「相続放棄」と区別が必要です。相続開始後に遺留分の侵害が明らかになっても、遺留分権利者遺留分減殺請求権の不行使により遺留分を事実上放棄することができます。

遺留分率いりゅうぶんりつ

遺留分権利者全体に残されるべき遺産全体に対する割合のことで、相続人の構成によって異なります。直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、その他の場合は2分の1です。子供2人が相統人の場合は遺留分率が2分の1ですから、それぞれの子供の遺留分は相続財産の4分の1ずつ(相続財産)×2分の1(遺留分率)×2分の1(2人)となります。

遺留分

いん

文書が真正で完成されていることを示すために押捺されます。他の証拠から文書の真正が確認できる場合は押印が必要でない場合もあります。帰化したロシア系日本人の無印の自筆証書遺言を有効と判断した最高裁判決もあります。「印」は指印でもよいとされます。

隠匿いんとく

人または物を隠して、他人の発見を妨げる行為のことです。被相続人の遺言を隠匿する行為は相続欠格事由となります。

相続欠格

うじ

戸籍ごとの個人の性で、古くは血縁関係にある家々の集団を意味し、また旧民法では家族制度における家の名称でした。名字のことです。

押印おういん

自筆証書遺言における押印は、全文の自書とあいまって遺言書作成の真正を担保するものです。わが国の慣行や法意識として、重要な文書については作成者が署名し押印をすることで文書の作成が完結するものとされています。自筆証書遺言に使用すべき印章には制限がなく、実印でなくても構いません。かつては捺印といいました。

乙類審判事件おつるい-しんぱんじけん

家事審判法の対象となる家事審判事件は、家事調停の対象となりうるか否かにより甲類審判事件と乙類審判事件に区別されます。

甲類審判事件は、紛争性が希薄なため手続上対立する当事者が想定されず、当事者の協議による任意処分が考えられないため、家事調停の対象になりません。9条1項甲類として掲げられた事件、その他の法律で甲類とみなされる事件を指します。具体例として、後見開始の審判、失踪宣告、子の氏の変更の許可、養子縁組の許可、死後離縁の許可、相続放棄申述の受理、遺言執行者の選任、氏又は名の変更の許可などがあります。

乙類審判事件は、甲類審判事件と異なり紛争性が高いために手続上対立する当事者が想定され、当事者の協議による解決が期待されるので、家事調停の対象となりえます。9条1項乙類として掲げられた事件、その他法律で乙類とみなされる事件を指します。家庭裁判所はいつでも調停に付すことが可能です。具体例として、婚姻費用分担に関する処分、離婚後の財産分与に関する処分、親権者の指定又は変更などがあり、遺産分割に関する処分も乙類審判事件に含まれます。

親子関係不存在確認訴訟おやこかんけいふそんざい-かくにんそしょう

推定を受けない嫡出子が父に対して父子関係を争う場合は摘出否認の訴えによらず、親子関係不存在確認の訴えによります。利害関係のある者ならいつでも誰でも父子関係の存否を争うことができるため、子の地位が不安定になってしまうといわれます。嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければなりません。

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