一部の相続人が勝手に相続財産を売却したり、自分名義の口座に移し替えたりしようとしている。

一部の相続人が勝手に相続財産を売却したり、自分名義の口座に移し替えたりしようとしている。

[投稿日]: [投稿者]:
[サブカテゴリ]:
一部の相続人が勝手に相続財産を売却したり、自分名義の口座に移し替えたりしようとしている。

一部の相続人が勝手に相続財産を売却したり、自分名義の口座に移し替えたりしようとしている。

相談者からの相談内容

祖母が亡くなり、相続が発生しました。 祖父や祖母の息子(私の父親)は既に他界しているので、相続人は祖母の孫である私たち3人姉妹です。祖母の遺産は約9000万円の預金と千代田区の実家不動産でした。 長女である私としては、姉妹間のことですし、特に争いごとにしたくなかったので、法定相続分とおり3分の1ずつ相続したいと考えていました。 しかし、次女が勝手に実家不動産を売却しようとしていることがわかり、慌ててストップをかけました。 次女の都合の良いように進められてはたまりません。姉妹3人で話し合った結果、ひとまず預金のみについて分割することにし、法定相続分とおり、それぞれ3000万円ずつを取得することになりました。 ところが、いざ手続きをしようとしたときに問題が発生しました。祖母の通帳を確認したところ、祖母の死後、遺産分割協議が成立する前に、次女が祖母の預金口座から自分の預金口座に500万円を勝手に移し替えていたのです。 勝手に不動産を売ろうとしたことや預金を移し替えていたことから、次女への不信感は募るばかりです。 事情を問い質そうとしても、のらりくらりとかわされてしまい、私自身が対応することの限界を感じています。 三女に相談したのですが、私に任せると言うばかりで協力してくれません。   これからどのように次女と話し合いを進めていくべきか悩んでいたところ、次女の弁護士から通知書が届きました。 その通知書には、次女に協力しなければ調停を申立てるというような内容が書かれていました。私としては、次女に協力していなかったつもりはなく、遺産分割協議成立を邪魔していたのはむしろ次女の方だと思います。 私も弁護士に依頼して対応した方がよいのでしょうか。 また、次女が無断で預金の移し替えを行ったことを問題にすることはできるでしょうか。
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

次女の勝手な行動から、感情的な対立が生じてしまっているようですね。今後の不動産に関する交渉等においては、弁護士が就いている次女に有利に進められてしまう可能性があります。交渉相手に弁護士が就いた以上、ご相談者も弁護士を就けた方が賢明でしょう。また、万が一、任意の交渉ではまとまらなかった場合、調停や裁判での解決になることを考えると、今のうちから弁護士に任せておいた方がよいでしょう。

三女と話し合い、意見が一致しているということでしたら、三女とともに同じ弁護士に依頼する方が、交渉すべき人数が減りますから話し合いもスムーズに進むと思われます。

次女による預金移し替えですが、結論から申し上げると現段階で問題にすることはできないでしょう。被相続人が有している預金は、被相続人が亡くなると、法定相続分に従って相続人それぞれに当然に分割されることになる、というのが判例の考え方です。

したがって、次女が法定相続分の範囲内である500万円を自分の口座に移し替えることは問題ないのです。

また、遺産分割協議により、次女は3000万円の預金を取得したとのことですから、次女が相続額よりも多くの預金を移し替えたわけではありませんので、やはり次女の行為はもう律上問題にはならないのです。

もっとも、500万円のほか不正な引き出しがないか確認する必要があります。次女は被相続人の預金を勝手に引き出すことができる立場にあったということでしょうし、相続人間で遺産分割協議をしているにもかかわらず勝手に預金を移し替えるような方ですから、被相続人の生前にも不正に引き出している可能性があります。

また、被相続人の財産を隠している可能性もあるでしょう。被相続人の預金口座の取引履歴を照会したり、他に遺産がないか調査する必要があります。時間を置いてしまうと、証拠が散逸し、不正を見つけることができなくなってしまいますので、今すぐ調査に踏み出した方がよいでしょう。

不動産に関する遺産分割協議において、不動産の売却価格や売却代金の分割方法が問題となります。ご相談者のケースでは、遺産である不動産を売却して、その売却代金を分割する換価分割の方法がとられると思われますから、相続人誰もが少しでも高く売りたいと考えている点では、利害が一致しているといえます。

しかし、売却代金が正当なものであるのか、分割の割合をどうするのかについては利害対立がありますから、積極的に自らの考えを主張すべきです。

また、次女による不正引き出しや遺産隠しが発覚した場合には、不動産に関する遺産分割において調整し、次女の相続分を少なくするよう主張すべきです。

ここがポイント!

相続人間で感情的な対立が生じてしまっている場合や、交渉の相手方に弁護士が就いた場合には、弁護士に依頼した方が賢明でしょう。一部の相続人による相続財産の無断引き出し等が問題となる場合もありますので、財産調査も併せて行いましょう。

 

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

この記事が参考になった方はクリック!

同じカテゴリーの相続相談事例 [カテゴリー:遺産分割編]

2019-08-20[カテゴリー]:
非相続人への生前贈与書面【遺産分割に与える影響】
相続が発生して遺言がないことが確認されました。 遺言遺産分割協議の途中で、相続人ではない親族への贈与が問題になっています。 贈与があったと主張している被相続人の孫がいます。 ただし贈与契約書もなく、本当に贈与契約があったのかが疑問です。 本当に贈与があったとしても、書面によらない…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【不動産の評価額】不動産を相続するしたほうが得?
遺産分割調停で不動産を取得する相続人を決めるためにもめています。 いったんは自宅を兄が相続することで決まったのですが、 遺産分割がまとまりそうだということで税理士の先生と打ち合わせをして相続税の申告書を作成シミュレーションを行っていたところ、 兄に有利な内容であることに気づきまし…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
弁護士を入れたらもめる?【吉本の宮迫・亮事件に学ぶ弁護士依頼のタイミング】
遺産分割協議でもめています。 家族同士の紛争ですが、遺産分割協議の話し合いは四十九日を過ぎたときから継続して1年以上、続いています。 家族同士なので相続に関する法律知識で理論武装しても、理屈が通じません。 例えば兄の自宅不動産は亡父がお金を出していたのですが、その事実を認めながら…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
多額の財産を独り占めし、一方的に100万円で片づけようとする長女。
母の相続のことで、3人姉妹でもめています。 長女と三女が結託して、私を遺産分割の話し合いから排除しようとします。 10年前に父が他界し、その後は実家で長女が母と同居していました。三女は結婚後も実家近くに住み、何かにつけ両親に甘えていたようです。私は地方に嫁ぎましたので…[サブカテゴリー]:
T家の事例:家系図参考になった!7
2019-08-20[カテゴリー]:
父を代襲して相続したが、叔父を相手にした遺産分割調停が膠着状態に。
先日、祖母が亡くなりました。 相続人は叔父と父なのですが、父がだいぶ前に亡くなっているので、父を代襲して私たち姉妹が叔父と遺産分割について話し合いを始めました。 叔父とは昔からそりが合わず、顔を合わせてもあまり話すことが無かったのですが、今回の相続をきっかけにますます…[サブカテゴリー]:
K家の事例:家系図参考になった!3

参考にしたい相続関連記事

2019-11-20
配偶者選びは慎重に【グッチ】
事業承継において将来の経営者の最有力候補は配偶者 グッチ家の最後の経営者マウリツィオ・グッチ氏の妻、パトリツィア氏は、元々貧困家庭の出身であったが、上昇志向が殊のほか強かったという。その美…
2020-02-07
Q56.遺言能力の判断基準
遺言能力≠認知症 遺言能力の判断基準は認知症の診断基準とイコールでないことはすでに述べた。では遺言能力の判断基準とはどのようなものなのだろうか。遺言能力とはどういうものであ…
2019-08-19
財産の不正操作 完全ガイド
序章 こんな家庭で起きやすい 第1章 兄弟間、親子間でもめる 第2章 お金・土地が不正操作されている 第3章…
2019-05-30
【一人暮らしの老人の場合には注意が必要】老人ホームに入居しても相続税申告において…
相続税対策と老人ホームへの入居 被相続人が老人ホームに入所した場合、自宅は小規模宅地等の特例を受けられるのでしょうか。配偶者や娘と同居している状況で、被相続人が病気や事故で精神や身体に重い…
2019-08-19
相続税がかからない財産
相続税がかからない財産 相続財産に含まれても相続税の課税対象にならない財産があります。 相続税の課税対象となる財産は、金銭に換算できる財産でも、課税対象から除かれる財産が…
2019-08-22
遺言による遺産分割
      遺言による遺産分割遺産分割の方法 1 遺言は遺産分割に優先 2 遺言の種類と調査方法 3 遺言の検認手続…
ページトップへ

カテゴリ別 相続相談一覧これまで弁護士に寄せられたカテゴリ別相続問題

遺 言
遺言無効を争う
遺留分を争う
  • 遺言無効
    確認訴訟
  • 遺留分
    減殺請求
  • 遺言執行者
    解任
だましうちで遺言を書かせる。財産の不正操作の常とう手段です。遺言無効確認の訴えや、遺留分減殺請求などにより、財産の不正操作と戦います。
遺産分割
財産の不正操作に
要注意!
  • 預金の
    無断引出
  • 名義の
    無断書換
預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。
不動産相続
評価や分け方で
モメる不動産相続
  • 評 価
    トラブル
  • 分 割
    トラブル
  • 不動産の
    不正操作
分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。
事業承継
同族会社の
内部紛争に勝つ!
  • 取締役の
    不正追及
  • 株主総会
    の形骸化
同族会社の内部紛争や支配権争いでお悩みの方のお手伝いをします。事業を営む方の相続問題は通常の相続以上に複雑です。会社の支配権を勝ちとり、事業を守り抜きます。
国際相続
国外財産があると
どうなるの?
  • 海外財産
  • 海外在住
  • 国際結婚
相続財産が海外にある場合、手続きが複雑になります。国内財産の分け方も絡む紛争を総合的に解決します。
相続税
節税対策の
ポイントを知りたい
  • 税務調査
  • 税務訴訟
  • 相続税の
    還付
生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。