母が勝手に父の預貯金を引き出しているが、これをやめさせたい。
[サブカテゴリ]:遺産分割
母が勝手に父の預貯金を引き出しているが、これをやめさせたい。
相談者からの相談内容
これから発生する父の相続について不安があります。 家族構成は、両親と兄、私の4人で、兄と私は結婚を機に実家を出て生活しています。 3年前、父は心筋梗塞で倒れ、一時危険な状態でしたが、何とか持ち直しました。 退院後、「すべての財産を長女(私)に渡す」という内容の公正証書遺言を作成したと父から聞きました。 というのも、母は父の入院中に父の預金口座から勝手にお金を引き出し、自分名義の口座に入金していたのです。 このことが発覚してから、父は母を全く信頼しなくなりました。また、兄も若いころ、多額の借金を父に返済してもらったことがあり、父からの信用を得ていません。 このような理由で、父は私に財産を受け継いでもらいたいと考えているようです。 父の財産の大半は土地で、貸駐車場等を含めると、およそ3000坪ほどあります。 父にとっては、先祖代々守ってきた大切な土地ですから、信頼できない母や兄ではなく、私に財産を守ってほしいと考えているようです。 しかし、私がすべての財産を相続することになると、母や兄から遺留分を請求されることになりますが、遺留分相当額を支払うだけの現金が用意できるかどうか心配です。 このような状況のなかで、先日再度父が倒れ、2回目の入院をしましたのですが、また母が勝手に父の預金からお金を引き出しているようです。 母を問い詰めても、のらりくらりとかわされてしまい、まともな話し合いはできません。 このままでは、父の預金をすべて使ってしまうのではないかと案じています。- 弁護士からの
一言アドバイス - 「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
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- 解決難易度
ご相談者が悩んでいらっしゃるように、相続の発生前に家族内の誰かが被相続人(亡くなった方)の預貯金を引き出してしまうケースが多く問題となっています。そのような生前の引出しがあったため、相続開始時(被相続人が亡くなった時)には、預貯金がほとんど残っていないということも少なくありません。
ただ、ご相談者の場合、お母様が預貯金を勝手に引き出している事実をすでに把握されている点が、他のケースと異なります。他のケースでは、相続開始後になって初めて、相続発生前の預貯金の引出しに気付くことが多いのです。ですから、ご相談者がお母様の使い込みに気付かれた点は大きなポイントになります。
対策としては、お父様の通帳、印鑑及び免許証など、お父様の財産管理に必要なものをお母様の手の届かないところに保管しましょう。お父様以外の方が、勝手に財産を使わないようにする状況を維持することが重要です。
他方で、将来的にご相談者がお母様から「お金を使い込んだのではないか。」などと主張されてしまうおそれがあります。相続で対立すると、そのような主張をされることが非常に多くあるのです。そうはいっても、入院費、生命保険料、税金等、お父様の口座から支払うべきお金もあることでしょう。そこで、お父様の通帳をこまめに記帳し、ご相談者が不正な引出しをしていない証拠を残しておきましょう。お父様の口座から現金を引き出して何かの購入や支払いに充てる場合、領収書などを必ず保管するようにしてください。
すでにお父様が公正証書遺言を用意されているとのことですが、遺言が存在する場合であっても、内容が異なる複数の遺言が発見されて、相続人間で遺産分割が紛糾するという例は少なくありません。被相続人が途中で気が変わって新しい遺言を作成した場合や、相続人のひとりが被相続人を説得して新しい遺言を作成させた場合など、遺言が複数作成されるケースは多々あります。
今回、すべての財産をご相談者に譲る旨の遺言があるとのことですが、新たな遺言が作成されるおそれも否定できません。特に、現時点で対立関係にあるお母様が、お父様を説得するなどすることも考えられます。そこで、ご相談者においては、お父様とのコミュニケーションを密にとりつつ、すでに存在する遺言が覆されないよう細心の注意を払う必要があります。
ここがポイント!
相続の発生前に家族内の誰かが被相続人の預貯金を引き出してしまうケースが多発しています。不正な動きに気が付いた場合には、通帳や印鑑などの保管場所・保管方法を見直す必要があります。
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