相続税申告を相続人ごとにする不利益【遺産分割がまとまらない】

相続税申告を相続人ごとにする不利益【遺産分割がまとまらない】

[投稿日]: [投稿者]:
[サブカテゴリ]:

相続税申告を相続人ごとにする不利益【遺産分割がまとまらない】

相談者からの相談内容

姉と私の2人が相続人になっている相続で、遺産分割協議が進行中ですがまとまりません。 相続税の申告義務が明らかにあるので、相続税の申告も必要になりますが、税理士もばらばらにつけているので、話し合いができません。 私の方で税理士を探すにしても、このままの状況ではバラバラに相続税申告をせざるを得ないといわれました。 相続税はそもそも個別に申告できるものなのでしょうか。 また申告できたとしても、不利益はないのでしょうか。 遺産分割協議がまとまらない場合に、遺産分割調停まで申し立てる必要があるかと思いますが、 遺産分割調停がまとまったとしても姉が相続税申告に協力しないということはありうるのでしょうか。 また協力が得られない場合は不利益はありますか。
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

いずれ相続税申告で協力しないと全相続人に不利益

相続税申告は建前上、すべての相続人が個別に行うものです。
実務上、全相続人が共同で相続税申告をしていることが多いのですが、原則からすると相続人ごとに相続税申告を行うのが建前になっています。
したがって、各相続人が個別に税理士に依頼して内容が異なる相続税申告書を提出することもあり得ますし、もめている相続だと個別に相続税申告を行うことがあり得ます。
まだ遺産分割協議が成立していない場合は遺産分割が未了であるとして遺産分割未了である旨を申告書に書きますので、法定相続分に従った相続分から納税額を申告することができます。
ただし相続税申告書の内容として相続財産の把握に差がある場合は、当然に内容が異なるために、税務署に対して説明を求められます。
税務署に正しい内容を説明するという意味では呉越同舟ながら利害が一致しているので、通常は、遺産分割が終了するなど対立関係が解消すれば、相続税申告書の中身をすり合わせることがあり得ます。
ただ実務上、相続税申告書を見せたくないという相続人がいます。
遺産分割協議が終了していても、相続税の申告書を見せたくない。
税理士は通常、税務調査に備えて相続税申告書の中身は揃えたがるのですが、弁護士が木で鼻をくくった対応をしていたり、依頼者である相続人自身が税理士に対して意地で見せないでほしいといっているケースもあります。
そうなるともともと相続税申告は相続人ごとに行ってもよいことになっている以上、相続税申告書を見せる義務はないので、遺産分割が終了しても相続税申告書の開示がない場合もあります。
通常は遺産分割協議書には財産目録があるのでそこまで困ることもないのですが、財産評価や生命保険、債務の扱いなどで歩調を合わせる必要が生じます。
また遺産分割協議ではなく、遺留分減殺などで解決した場合は、財産目録を整備していることはしているものの、財産評価に関する基本的な情報がないこともあるのです。
実際に対立当事者の弁護士から、相続税申告書の開示を断られることもあります。
弁護士同士が相続税申告書の開示に同意をしても、依頼者である相続人本人が同意をしない限り、弁護士としてはいかんともしがたいのです。
個別に相続税申告をした場合、税務調査が入り確認を求められることになります。
その時に改めて相続税申告についての協力が得られなかった旨の説明をして対応することになるかと思います。
いずれにせよ、遺産分割が未了のうちならともかくとして、遺産分割が終了した以上は、相続税申告を各相続人で個別に提出することは避けたいものです。
対立が深い相続人間の遺産分割協議書には、弁護士が入っているならば、相続税申告において協力する旨の合意も入れておくべきでしょう。

ここがポイント!

遺産分割が未了なら相続人ごとでもOK!

遺産分割が終了した場合は相続税申告も相互に協力すべき。
遺産分割協議書に相続税申告について協力し合う旨の条項を入れるべき。

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

この記事が参考になった方はクリック!

同じカテゴリーの相続相談事例 [カテゴリー:遺産分割編]

2019-08-20[カテゴリー]:
実家不動産をもらったことにしている兄から相続分をもらいたい。
持病が悪化して母が闘病生活の後に亡くなってから2年後に、父も亡くなりました。 母が亡くなった時にすでに、父も体調を壊していたこともあり、母の遺産は全く手付かずの状態です。 父が亡くなったことから、両親の遺産について分割をする必要が生じました。 相続人は私と兄の2…[サブカテゴリー]:
M家の事例:家系図参考になった!2
2019-08-20[カテゴリー]:
非相続人への生前贈与書面【遺産分割に与える影響】
相続が発生して遺言がないことが確認されました。 遺言遺産分割協議の途中で、相続人ではない親族への贈与が問題になっています。 贈与があったと主張している被相続人の孫がいます。 ただし贈与契約書もなく、本当に贈与契約があったのかが疑問です。 本当に贈与があったとしても、書面によらない…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
姉と同居していた母の貯金額が、働いていなかったのに不自然に多い。姉の夫は税理士な…
母の相続についてトラブルを抱えています。 13年前に父が亡くなりましたので、相続人は姉と私の2人です。 父の相続の際、開示されているもの以外に父名義の現預金はないと母から聞きました。 母の死後、遺産の整理をしていると、母名義の預金が5000万円あることがわかりま…[サブカテゴリー]:
S家の事例:家系図参考になった!7
2019-08-20[カテゴリー]:
遺言執行者に指名されている義兄主導で遺言執行が進む。財産はもらえるのか。
父の相続について、姉一家ともめています。 母は父よりも先に亡くなりましたので、相続人は姉と私の2人なのですが、義兄である姉の夫が、何かにつけ口を挟んできます。 というのも、父が亡くなって遺産分割の話を始めた際には見つかっていなかった遺言が、父の死後3カ月経って発見され…[サブカテゴリー]:
W家の事例:家系図参考になった!4
2019-08-20[カテゴリー]:
【生前贈与と書面によらない贈与の撤回】唐突な生前贈与と超過特別受益
弟が亡くなり、弟の嫁と私が相続人です。 遺言はなく、弟が残した自宅不動産について、遺産分割協議をすることになりました。 義妹が自宅に住んでいるので、不動産を義理の妹が取得するのは仕方がないと思っていました。 自宅以外にはほぼ相続財産は有りません。 そこで遺産分割の焦点は代償金の妥…[サブカテゴリー]:

参考にしたい相続関連記事

2019-09-23
銀河系兄弟の相続争い【サムスン電子】
兄弟間の相続紛争 「SAMSUNG」のロゴでおなじみの、韓国国内最大の家電・電子部品メーカー。近年、スマートフォンやタブレット端末でよく見かけるようになった。創業者のイ・ビョンチョル(李秉…
2019-08-19
遺産分割審判による分割 -遺産分割の方法
遺産分割審判による分割遺産分割の方法 遺産分割調停が不成立となった場合、遺産分割審判手続に移行します。審判とは、家庭裁判所の審判官が相続人の主張や遺産の内容を客観的に判断して…
2019-01-10
【相続税対策以外の観点からも検討が必要】事業承継と養子
相続税対策の観点からだけでは判断できない 後継者を長男としたいのですが、難しい問題を抱えている場合があります。例えば、長男が離婚調停中で、離婚が成立しないうちに相続が発生したり、事業を承継…
2019-10-19
アーティストまで巻き込んだクーデター【エイベックス】
利益相反取引を理由とした辞任勧告 1988年創業の大手音楽会社であるエイベックス。創業当初は松浦勝人氏らにより設立された輸入レコードの卸会社であったが、1990年に自社レーベル「 a v …
2015-03-17
第3回 終活の第一歩に「遺影写真」撮影を提案
4人に1人。超高齢者社会の終活 日本人の4人に1人は高齢者となった。65歳以上の高齢者人口は、過去最高の3,190万人で、総人口に占める割合も25.1%と過去最高となった(平成26年度内閣…
2019-11-10
絶対王政の復活【フジテレビ】
TOBによるニッポン放送株の買い増しを検討 株主としての支配権を強化するため、TOBによるニッポン放送株の買い増しが考えられる。ライブドアがニッポン放送によるフジテレビへの新株予約権発行の…
ページトップへ

カテゴリ別 相続相談一覧これまで弁護士に寄せられたカテゴリ別相続問題

遺 言
遺言無効を争う
遺留分を争う
  • 遺言無効
    確認訴訟
  • 遺留分
    減殺請求
  • 遺言執行者
    解任
だましうちで遺言を書かせる。財産の不正操作の常とう手段です。遺言無効確認の訴えや、遺留分減殺請求などにより、財産の不正操作と戦います。
遺産分割
財産の不正操作に
要注意!
  • 預金の
    無断引出
  • 名義の
    無断書換
預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。
不動産相続
評価や分け方で
モメる不動産相続
  • 評 価
    トラブル
  • 分 割
    トラブル
  • 不動産の
    不正操作
分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。
事業承継
同族会社の
内部紛争に勝つ!
  • 取締役の
    不正追及
  • 株主総会
    の形骸化
同族会社の内部紛争や支配権争いでお悩みの方のお手伝いをします。事業を営む方の相続問題は通常の相続以上に複雑です。会社の支配権を勝ちとり、事業を守り抜きます。
国際相続
国外財産があると
どうなるの?
  • 海外財産
  • 海外在住
  • 国際結婚
相続財産が海外にある場合、手続きが複雑になります。国内財産の分け方も絡む紛争を総合的に解決します。
相続税
節税対策の
ポイントを知りたい
  • 税務調査
  • 税務訴訟
  • 相続税の
    還付
生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。