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【認知症と相続】遺言作成、贈与、遺言無効、遺産分割、相続税対策[POSTED]:2019-07-04
認知症は大きなテーマ
家族が認知症にかかると見えてくることがある。
自分のことを育ててくれた親が、自分のことすら覚えていない。
表情は乏しく、偉大で大きかった親が、エプロンをして流動食を食べている。
当り前だが、人は老いるもの。
ショックを覚えるが、身内の介護で見えてくることがある。
介護をきっかけに書籍を書いたり、介護問題に取り組み始める方は多い。
元国会議員の田中真紀子氏は、父の介護をきっかけに議員立法を提出。
教育職員免許状取得者に介護体験が義務化された。
介護とは人にかくも大きな影響を与える。
相続でも大きな問題
相続でも介護は大きな問題になる。
介護と相続で誰でも連想するのが、介護による寄与分の主張。
介護をした分だけ寄与分を認めてもらえるかというと、実務上は親族による扶養義務があるために特別の犠牲がない限り寄与分が認められない。
介護をしたことは介護の現場の苦労にも拘らず、相続において置き去りにされている状況である。
ただこのことは遺産分割がもめる原因になる。
せっかく一生懸命に介護をしたのに、寄与分が認められず、相続の遺産分割において報われない。
怨念の情が、遺産分割調停を長引かせることがある。
結果的に介護が報われなくても、大きな議題となり得るのは、このような事情にある。
遺言や贈与、相続税対策、遺産分割ができるか
寄与分の論点以外でも、介護は相続において問題になる。
遺言作成の段階。
遺言は認知症でも書けるが、認知症の程度や遺言内容の複雑性などの諸事情により、遺言が無効になることがある。
また認知症により成年後見が開始してしまうと、遺言が書けなくなる。
遺言は自由に書き直しができ、いつでも書けるのだが、成年後見が開始してしまうと書けなくなる。
成年後見制度は利用することで、一切の大きな財産処分ができなくなる。
実際には成年後見を開始する必要があっても、あえて利用しないケースもある。
相続税対策も同様で、財産構成を変更しようとしても、認知症の程度によっては財産処分が無効とされる。
また高齢化社会において、相続人自体が認知症にかかっている場合もある。
そうなると後見制度を利用しないと遺産分割ができない。
認知症は相続の各場面において、問題を起こす。
相続開始前のフリーズ期間
認知症は本来的に自由に意思表示ができる相続開始前、つまり生前における、フリーズ期間ともいえる。
認知症にり患している期間がなければ、相続開始前と相続開始後という2分論で考えられるところ、
認知症にり患している場合は、相続開始前でも意思決定ができない可能性があるフリーズ期間が入ってしまう。
しかもたちが悪いことに、事後的に無効とされるリスクを負うもので、事前には確定的に有効無効の判断ができない。
有効無効が該当行為との関係で相対的に判断されるのも特徴的で、
たとえば遺言や贈与でも、単純な内容であれば有効でありうるし、複雑な内容であれば無効になりやすい。
認知症状の発現形態は人によってさまざまであるが、
認知症が相続に与える影響も画一的ではなく、相対的なものなのだ。
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