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【遺産分割の対象と相続の対象は同義ではない】相続における法の多元性[POSTED]:2018-09-16
相続税法は公法
相続については遺産分割を律する民法と、相続税法では、基準が異なります。
民法が私人間の権利関係の調整を図る目的のものであるのに対し、相続税法は確実な相続税の賦課・徴収を図る目的で制定されています。
そもそも民法は私法であるのに対し、相続税法は公法です。
私人間を規律する私法に対して、国家との間を規律する公法という違いがあるのです。
私法の世界では私的自治の原則が徹底されているため、当事者の同意さえあれば基本的に自由に物事を決められます。
実際にあった事実と違っていたとしても、当事者が合意した内容の事実があったものとして裁判が進められることもあります。
お互いが不問に付したい事実についてはなかったこととして、争いたいポイントに集中することも可能です。
それに対して公法の世界では、当事者の同意があったとしても、統一的な対応の要請などで自由に物事が決められないという問題があります。
相続税の計算の方法を当事者同士で決めてしまうことができないことは、容易に理解ができるでしょう。
概念が異なる「相続財産」
「相続財産」の概念が異なることも民法と相続税法の違いとして重要です。
民法上の遺産分割の対象となる相続財産は被相続人の財産すべてです。
一方、相続税の対象となる財産は、本来の相続財産、みなし相続財産および相続開始前3年以内の贈与財産の3種に分類されます。
遺産分割は、相続開始後、共同相続人の共同所有に属している相続財産を、各相続人に分配分属させる手続きですから、その対象となる財産の範囲は、相続性を有する一切の権利義務です(一身専属的な権利義務を除く)。
しかし、「相続の対象となる遺産」=「遺産分割協議の対象」ではありません。
遺産分割の対象外となる財産
遺産分割協議を待つまでもなく、相続開始と同時に各相続人の法定相続分に応じて当然に分割されるものもあります。まず金銭債務です。金銭債務も相続により相続人が義務を承継します。
判例は、一貫して遺産分割の対象ではないとしており、各相続人の法定相続分に応じて、当然に包括承継します。
相続財産から生じた果実および収益も同様です。相続開始後の家賃収入・利息・配当金などの法定果実は、本来は相続財産そのものではなく、遺産分割の対象外です。
したがって、各相続人が相続分に従って取得します。
例えば、相続財産を構成する建物が火災で焼失し、火災保険金が支払われる場合など、本来の姿を代えた財産(代償財産)として存在する場合の代償金も、遺産分割の対象外です。
死亡退職金や遺族年金、生命保険金は、遺族固有の権利であり、遺産分割の対象としての相続財産には含まれません。
相続税の対象となる財産は、本来の相続財産、みなし相続財産および相続開始前3年以内の贈与財産の3種に分類することができます。
本来の相続財産は、相続または遺贈により取得した財産の全部のことです。
みなし相続財産は、法律的には相続または遺贈により取得した財産とはいい難いが、実質的には相続または遺贈による取得財産と同視すべきものをいいます。 生命保険金や死亡に伴う損害保険金などが例です。
相続開始前3年以内の贈与財産は、相続開始の日から遡って3年目の応当日から相続開始までに、相続人が被相続人から贈与により取得した財産をいいます。
相続税の補完税としての役割をもつ贈与税を、相続税の課税上精算することを目的とする制度であり、相続開始前3年以内に納付した贈与税は、相続税から控除されます。
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