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【相続税の税務調査で問題となる贈与】相続税において見逃されない財産移動[POSTED]:2018-11-23
贈与税の不申告は相続税の税務調査で明らかに
相続発生前の段階で贈与税が論じられることがあまりありません。
たとえ家族内の財産の移動があったとしても、不動産のように登記が動いたという外形上の変化がなければ、外部からは把握しにくいからです。
そうすると、贈与税の時効が完成すれば贈与税について徴収することができないことになってしまい、不都合が生じます。
では贈与税の不申告はそのまま見逃されるのかというと、そうではありません。
税務署が親族間の財産移転について問題にするのは、相続税の税務調査の時です。
その調査の際に、何十年も前に行われた可能性がある贈与を見つけたとしても、時効の関係で、実際には贈与税を支払うことにはなりません。
贈与を否定して相続税の課税対象に
財産移動の痕跡を発見した税務署は、財産移動すなわち贈与の事実自体を否定し、被相続人の財産であるとすることがあります。
つまり、財産移動は形式的なものであって、実質的には移動しておらず、そもそも贈与はなかったと考えるのです。
贈与の事実が存在しないのであれば、その財産は贈与者とされる被相続人の財産のままであるといえますから、被相続人の相続財産として相続税の課税対象とすることができます。
相続人としては、贈与がなされたことを前提として相続税の申告・納付を行っているわけですから、もちろんこの贈与財産については遺産に含めておらず、税務署の立場からすれば申告漏れの状態となります。
時効が完成したと思っていた贈与についても、贈与の成立が否定されることによって課税対象になってしまうのです。
このように、相続税の税務調査の際に、贈与の事実自体が認定されにくいように処理されているのです。
「7年の時効期間が経過している」として贈与税の時効に関する主張を許し、贈与税を徴収できないことになるのではなく、そもそも贈与自体が成立していないとして、贈与にかかる財産はあげた側である被相続人の財産と認定したうえで、相続財産の申告漏れとして扱う実務が定着しています。
贈与の事実の有無を実質的に判断
贈与税の時効は確かに存在するものの、そもそも贈与があったという事実を認定するハードルをある程度高くしているのです。
これは決して贈与をなかなか認定しないということではなく、本来、贈与ではないものを贈与とは認定しないという当たり前の運用でしかありません。
結果的に贈与があったという事実は認定されにくくなっています。
ただし実際の税務調査においてすべからく贈与が否定されるというものではありません。
贈与の事実の有無を実質的に判断することが先行しているのは、言うまでもありません。
永遠に遡るかというとそうではなく、7年以上前の贈与については、問題にしないという運用がなされる場合もあります。
贈与税の課税権は期間制限にかかりにくい
税務申告や更正決定などにより納税義務が具体化することにより発生する課税権の期間制限(除斥期間)も問題となります。
家族の間で行われた財産のやり取りについては、仮に贈与であると認定されたとしても、贈与税の課税権が期間制限にかかりにくくなっているのです。
家族間での財産のやり取りは、書面による贈与契約書が作成されないのが通常です。
口頭での贈与である以上、履行が終わるまではいつでも取り消すことができます(民法550条)。
取り消すことができない状態、すなわち、履行が終わった状態になるまでは贈与は確定的にされていないとして、時効の進行が認められません。
贈与が確定的になる履行の時から、時効は進行することになります。
履行の時は具体的に、登記または登録があった時とされています(相続税法基本通達1の3・1の4共―11)。
公正証書を作成した場合でも、客観的事情を詳細に検討
問題になるのは、書面で贈与契約成立日を明示しておき、実際の目的物の引渡しや登記の時期をその日より遅らせるケースなどです。
課税庁が登記により贈与の事実を把握し課税を行おうとしても、書面に記載された契約成立日から起算すると課税権の期間制限が徒過しています。
書面作成を盾にとって期間経過を主張する納税者と課税庁との間に争いが生じ、裁判になるケースもあります。
問題になる書面は主に公正証書です。
公正証書を作成することによって、その証拠力を利用して贈与契約があったように仮装し、相続税の課税を免れることを主な目的として作成されることもあるようです。
公正証書が作成されている場合であっても、記載されたとおりの契約が真実存在したかどうか、公正証書以外の資料によって、公正証書作成の背景など客観的な実情や作成当事者の行動などの具体的な事実が詳細に検討されます。
公正証書に記載された内容が本当に当事者の意思を反映したものでないことが判明した場合には、公正証書の記載内容にもかかわらず契約の成立を否定し、真実の法律関係に基づいて正当な課税が課されることになります。
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