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【納税資金を確保できなかった場合にどうするか】相続税における延納と物納の検討[POSTED]:2018-11-05
本来の相続税額よりも多額を支払うことになる延納
どうしても、納税期限までに納税資金を確保することができない場合には、延納や物納を検討することになります。
延納とは、期限内に相続税を完納できない場合に、納付期限までに延納申請し、許可を得ることにより、5年から20年の年賦で分割して納めることができる制度です。
つまり、ローンを組んで分割払いをするものです。
もっとも、この制度は、原則として次の要件をすべて満たす場合にのみ認められます。
① 納付額が10万円を超えること
② 金銭を一度に納付することが困難とする事由があること
③ 延納税額に見合うだけの担保を提供すること
④ 相続税の納付期限までに延納申請書と担保提供関係書類を提出すること
提供する担保は相続財産でなくても問題なく、第三者からの担保提供や保証でもよいとされています。
延納期間中は利子税を支払う必要があります。ローンでいうところの利息のようなものです。
利息を支払わなければならないということは、本来の相続税額よりも多い金額を支払う必要があるということですから、この点は考慮して延納を利用するかどうかを決めなければなりません。
延納によっても相続税を納付できない場合には物納を検討
延納によっても現金で納付するのが困難な事情がある場合は、不動産や国債、地方債、株式などのモノで納める物納制度を活用することになります。
物納は延納によっても納付することが困難な事情がある場合に認められるものですし、申請財産が物納できる財産であり、かつ日本国内にあることなどの条件を満たす必要があります。
また、延納の場合と同様、納付までの期間に応じた利子税を負担しなければならないうえ、物納できる財産は自由に選べるわけではなく、対象財産の種類と優先順位は決められています。
先順位の財産がない場合に限り、後順位の財産で物納できるのです。
例えば、先順位である国債、地方債、不動産、株式などがないときにはじめて、貴金属や骨董品などの動産で物納することができます。
他の相続人が物納申請した場合には注意
なお、延納や物納の申請をした場合、相続税の徴収権の時効は中断します(国税通則法基本通達73条3項)。
相続税の時効は、脱税などの悪質な場合を除いて5年です。
そして、相続税の納税には連帯納付義務が定められています。
各相続人が、相続や遺贈、死因贈与で受けた利益額を限度として、お互いに連帯して納付する責任を負わなければならない義務を負うのです。
自分は期限内に納付を済ませているので安心だと思っていても、他の相続人が物納申請していた場合、物納申請した相続人に対する徴収権の時効は中断していることになります。
物納申請した相続人に対する時効中断の効果は、連帯納付義務を負う相続人にも及びますから(最決平成14年9月13日参照)、連帯納付義務を負う相続人に対する徴収権も時効中断され、時効が完成しないこともあり得るのです。
相続人全員が納税資金を確保しているのかを確認
延納や物納は一定の条件をクリアしなければ認められないものですし、そもそも申請しても必ずしも認められるものではなく、申請が却下されることもあります。
相続税が支払えなければ最終的に延納や物納すればよいと安易に考えていると痛い目に遭う可能性があります。
よって、納税資金は事前に確保しておくべきです。
また、連帯納付義務を負う以上、自分の納税資金のみならず、相続人全員について納税資金は確保されているかを確認する必要があります。
そうしないと、自分としては納税を済ませたと考えていたにもかかわらず、忘れたころに資金不足に陥っている相続人に代わって責任を負わされる目に遭うことにもなりかねません。
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