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【胎児も相続人となるのか】胎児がいる場合の遺産分割と相続税申告[POSTED]:2018-09-04
相続における胎児の地位
親が死亡した場合、子供がいれば、残された配偶者と子供が法定相続人になります。
それでは夫が死亡した際に、妻のお腹の中に亡くなった夫との間の赤ちゃん(胎児)がいた場合、赤ちゃんは相続人となるのでしょうか。
「既に命がある以上、相続人として認められるべきだ」
という考え方もあれば、
「まだ生まれてもいないのだから、認められないだろう」
という考えもある。どちらの理屈も成り立ちそうですね。
日本の民法は、お腹の中の赤ちゃんも相続人となりうると定めています。
民法では、権利や義務の主体となり得る資格のことを「権利能力」と呼び、権利能力をすべての「人」に認めています。
この権利能力の発生については「出生に始まる」のが原則です。
ところが、この原則の例外として「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」(886条1項)とも規定しています。
このように民法は、相続については、人と胎児に境がありません。
ただし、「胎児が死体で生まれたときは、適用しない」(同条2項)とも規定してあるように、母親のお腹の中から生きて生まれてくることを条件としています。
したがって、もし夫を亡くした妻のお腹の中に胎児がいる状態で遺産分割をする場合は、いったん胎児については相続人として考慮に入れず、遺産分割をせざるを得ないでしょう。
その場合は、胎児が生きて生まれてきたら、相続開始時にもう1人子供がいたものとして、改めて遺産分割をやり直さなければなりません。
このため現実的には、夫を亡くした妻のお腹の中に胎児がいる場合、出産するまでは遺産分割の手続きを待った方が混乱を招きません。
ちなみに、胎児が生きて生まれてきた場合は、生まれてきた子供も相続人となりますので、相続税の算定にも関わってきます。
胎児が相続税の申告書提出前に生まれてきた場合は、相続人の1人として申告をすることになるわけです。
もし、胎児が相続税の申告書の提出までに生まれていない場合は、まず、胎児がいないものとして相続税の算定を行います。
そして、出生後に胎児の申告書を提出することになります。
刑法では
相続の話からいったん離れますが、刑法では、胎児はどのように扱われているでしょうか。
例えば、「人」を殺害した場合に問われる殺人罪は、胎児を対象としていません。
刑法では、胎児の体が一部でも母体の外から見えた時点から、「人」になるというのが通説であり、判例の立場でもあります。
従って、母親のお腹の中にいる限り、意図的に危害を加えて死なせても殺人罪にはならないという解釈になるのです。
また我が国では、母体保護法によって、身体的・経済的理由で母体の健康を著しく害する時など一定の条件を満たした場合、医師による人工中絶を認めています。
一方、刑法では、女性が自ら薬を飲むなどして堕胎する「自己堕胎罪」(212条)、女性から依頼を受けて堕胎させる「同意堕胎罪」(213条1文)、女性の依頼や承諾を得ずに堕胎させる「不同意堕胎罪」(215条1項)に対する処罰を定めています。
これらの刑罰が実際に適用されることは稀ですが、平成21年初めころ医師が交際相手に薬剤を投与して流産させたとして、不同意堕胎罪で同22年5月に逮捕され、有罪判決を受けたケースがありました。
この医師は、妊娠した交際相手に「ビタミン剤」だと偽り、子宮収縮止血作用のある錠剤や粉末を服用させた上、栄養補給を装って陣痛誘発剤を点滴し、流産させたといいます。
人の命を救うべき立場にある医師の専門知識を悪用した点で、非常に悪質な犯罪と言えるでしょう。
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