【平行線ならどうなるか】不動産評価でもめている遺産分割

【平行線ならどうなるか】不動産評価でもめている遺産分割

[投稿日]: [投稿者]:
[サブカテゴリ]:

【平行線ならどうなるか】不動産評価でもめている遺産分割

相談者からの相談内容

母が亡くなった相続で、兄との遺産分割調停中で長引いています。 ポイントはいくつかあったのですが、最終的には不動産評価についてもめています。 兄は不動産評価を低めに出しているようですが、客観的にはもっと高い価値があるはずの不動産になります。 自分ができるだけ多くの相続財産を相続して、私に対する代償金を少なめに済ませられるように、 不動産評価を操作しています。 複数の不動産業者に聞いたのですが、兄の提出している評価額はそんなに低いはずはないだろうという水準です。 私は複数の不動産業者に聞いて出してもらった査定書を持っています。 この額であれば買い取るという買付証明もとつりつけられると思います。 このまま不動産評価について物別れに終わった場合にはどうなってしまうのでしょうか。 また妥当な不動産評価はどのようなものなのでしょうか。
弁護士からの
一言アドバイス
「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
今すぐ弁護士度
簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
解決難易度

不動産評価は結局、裁判所が入って不動産鑑定をすることに

不動産評価額は遺産分割でのモメ要素

遺産分割において不動産評価でもめることはありがちです。
不動産を誰が取得するかについて、被相続人の自宅である場合は、同居していた相続人、この場合は兄が取得することで最初から結論が出ていることが多いでしょう。
しかしその不動産評価をどう見るかについては、相続人間で意見が分かれるのが常です。
不動産を相続する相続人にとっては低く評価することによって自分の相続財産全体の価格をあげようと思う一方で、不動産を相続しない相続人にとっては高く評価することで自分が相続する相続財産を少しでも多くしようとします。

税理士が出した路線価価格には注意

ありがちなのは相続税で用いる路線価価格を用いて不動産評価額を主張するケースです。
路線価価格だと時価よりも低く、場合によってはかなり低く出てしまうので、あっさりと乗せられないようにする必要があります。
どのくらい低いかというと、時価の2割程度にしかならない不動産もあります。
路線価価格は相続税申告において税理士が用いるものなので、税理士がしっかりと鑑定したかのような体で主張されることがあります。
そのまますんなりと通ってしまうこともあるので、注意が必要です。
特に弁護士がついている案件では、弁護士が税理士の書面をうのみにしがちです。

不動産業者の不動産査定書は各相続人の意向を汲んだもの

遺産分割調停で不動産評価に関する意見が分かれた場合、双方の相続人がお互いに不動産業者の出した不動産査定書を提出し合うことがよくあります。
この不動査定書は多くの場合、無料で不動産業者が作成することが多いのですが、不動産評価を高めに出してほしい、逆に低めに出してほしいという依頼者である各相続人の意向を汲んだものになります。
いわば客観性が担保されていないものなので、不動産査定書については双方ともに出し合ったうえで、折り合いをつけることになる流れになるのですが、それでも話し合いがつかないことがあります。

最後は不動産鑑定士だが費用に躊躇することも

最終的には不動産鑑定士が作成した不動産鑑定書によることになるのですが、裁判所が介入して裁判所が決めた不動産鑑定士にお願いすることになります。
不動産鑑定士にお願いした結果については各相続人ともに異存がなく、文句は言わない旨の約束をしたうえで、お願いすることになります。
この不動産鑑定ですが当然、費用が必要になります。
数十万円はしますが、各相続人が法定相続人に従って案分負担します。
この費用負担について聞いて、それまで不動産鑑定を強硬に主張していた相続人があっさりと不動産鑑定をあきらめることもあります。
このようにして不動産鑑定が出れば、不動産に関する遺産分割がまとまる算段になりますが、不動産鑑定をすることにならないパターンもあります。

不動産の現物相続を希望し始めることも

それまでに不動産はいらないと言っていた相続人が急に、不動産を欲しがり始めることがあります。
そうなると不動産をどちらが相続するかについて、もめ始めることに。
もともと不動産がどの地域に存在するかなどの事情によって、不動産に近い場所に居住する相続人が相続することが多いのですが、強硬に相続を主張された場合、不動産を現物相続することを期待する権利は法的に保障されていません。
不動産はだれに相続されるかが決まらないければ、現物で共有することになります。
遺産分割協議で現物共有が決まることもあれば、遺産分割協議で決まらなくてもいずれ遺産分割審判で共有とされることになります。
ただもめていた相続人間で不動産を共有することになるのでうまくいくわけがありません。
いずれ共有物分割請求で半分に分けて分筆することになります。
すると分筆後の各不動産は、もともとの不動産の価値の半分以下になります。
道路付けや角地でなくなる、整形地でなくなるなどの事情で評価が下がるからです。

なかなか決まらなければ換価分割に

であれば、いっそのこと不動産を売却して売却したお金を相続する換価分割も検討されることになります。
その場合もどちらの相続人が売却する不動産業者を探すかの問題があります。
コンペの形をとることが一般的です。
自分が今後住むことを予定している不動産で、同居中から住んできた不動産を手放したくないお兄様としては、自宅不動産を相続するために、最終的には妥協をしてくることも考えられます。

ここがポイント!

路線価価格と不動産業者査定、不動産鑑定士、現物分割、換価分割

主張内容によっては相手の相続人が大幅な妥協をすることも

[投稿日]: [投稿者]:永田町法律税務事務所

この記事が参考になった方はクリック!

同じカテゴリーの相続相談事例 [カテゴリー:遺産分割編]

2019-08-20[カテゴリー]:
【遺産分割調停を地元の弁護士にお願いしてもよいか?】地元の弁護士による馴れ合いが…
父が亡くなり、母と兄を相手に相続でもめています。 母と兄は小さな地方都市に住んでいて、私は東京に住んでいます。 遺産分割調停を申し立てようとしているのですが、父が地元の名士であったことから、母と兄を相手に遺産分割調停を申し立てるといろいろと不利になることを心配しています。 裁判官…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【不動産の評価額】不動産を相続するしたほうが得?
遺産分割調停で不動産を取得する相続人を決めるためにもめています。 いったんは自宅を兄が相続することで決まったのですが、 遺産分割がまとまりそうだということで税理士の先生と打ち合わせをして相続税の申告書を作成シミュレーションを行っていたところ、 兄に有利な内容であることに気づきまし…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
【遺産分割の問題?】葬式費用は誰が持つの?
父の葬儀にかかった費用でもめています。 全部で200万円かかっているのですが、だれが負担するかでもめています。 兄が葬儀社に対して支払いをしたのですが、立替払いをしたとして母に対して支払いを求めています。 母には手持ち現金がなく、相続財産も現金があまりありません。 お金を持ってい…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
財産の使い込み(家族内ドロボー)に関する勝訴見込
父が亡くなりました。 生前、兄が父の財産を使い込んでいたので、遺産分割では不正な預金の引き出しも含めて追及したいと思います。 父が事業をしており、兄が事業を承継した関係で、事業資金として使った中に私用の使い込みも多々含まれているはずです。 確認をしたところ、いろいろと説明を受けて…[サブカテゴリー]:
2019-08-20[カテゴリー]:
弁護士を入れたらもめる?【吉本の宮迫・亮事件に学ぶ弁護士依頼のタイミング】
遺産分割協議でもめています。 家族同士の紛争ですが、遺産分割協議の話し合いは四十九日を過ぎたときから継続して1年以上、続いています。 家族同士なので相続に関する法律知識で理論武装しても、理屈が通じません。 例えば兄の自宅不動産は亡父がお金を出していたのですが、その事実を認めながら…[サブカテゴリー]:

参考にしたい相続関連記事

2019-08-19
序章 こんな家庭で起きやすい -財産の不正操作 完全ガイド
序章 こんな家庭で起きやすい 第1章 兄弟間、親子間でもめる 第2章 お金・土地が不正操作されている 第3章…
2018-10-04
【株式評価は納税者にとって有利に調整】相続税における株式の評価
上場株式の相続税評価額 株式の相続税評価額も被相続人が亡くなったまさにその日の価額ではなく、納税者に有利な方向で調整されています。株式には上場株式と非上場株式がありますが、株式の評価方法は…
2017-06-24
通夜・葬儀
通夜・葬儀 葬儀の日程 僧侶・神官等に連絡して葬儀の日程を決定します。一般的には、死亡した当日に納棺、翌日に通夜、翌々日に葬儀・告別式とすることが多いです。当日に通夜、翌日に葬儀・告別式…
2018-03-27
【相続専門弁護士には相続税と不動産の知識が必要】相続における弁護士業務の専門性(…
弁護士業務における相続分野は専門性が非常に高い。相続税に対するケアが必要になるからである。交通事故における損害額の計算方法などは、素人にはわかりにくい専門性がある。離婚の財産分与や養育費の計…
2019-07-29
社長交代劇の仕組み【大塚家具】
事業承継でのポイントである社長交代劇 勝久氏と久美子氏の間では、これまで三度も社長交代劇が行われている。お家騒動での転換点となる社長交代劇。社長の選任・解任の仕組みについて説明しておく。社…
2018-09-03
【都市部の若年層は相続させず?子の方が相続に不安?】相続に関する親子の意識格差
「子孫に美田は残さず」相続に関する親の意識 内閣府が平成22年度 に実施した「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」では、相続に関連する興味深い統計結果が出ています。調査は全国の60歳以…
ページトップへ

カテゴリ別 相続相談一覧これまで弁護士に寄せられたカテゴリ別相続問題

遺 言
遺言無効を争う
遺留分を争う
  • 遺言無効
    確認訴訟
  • 遺留分
    減殺請求
  • 遺言執行者
    解任
だましうちで遺言を書かせる。財産の不正操作の常とう手段です。遺言無効確認の訴えや、遺留分減殺請求などにより、財産の不正操作と戦います。
遺産分割
財産の不正操作に
要注意!
  • 預金の
    無断引出
  • 名義の
    無断書換
預金を勝手に引き出したり、不動産の名義を勝手に書き換える。財産の不正操作と徹底的に戦う覚悟がある方のお力になります。
不動産相続
評価や分け方で
モメる不動産相続
  • 評 価
    トラブル
  • 分 割
    トラブル
  • 不動産の
    不正操作
分けられない財産の典型である不動産。不動産の評価について相続人間でモメます。そもそも不動産が相続財産かどうかも問題になります。不動産を独り占めする財産の不正操作と最後まで戦います。
事業承継
同族会社の
内部紛争に勝つ!
  • 取締役の
    不正追及
  • 株主総会
    の形骸化
同族会社の内部紛争や支配権争いでお悩みの方のお手伝いをします。事業を営む方の相続問題は通常の相続以上に複雑です。会社の支配権を勝ちとり、事業を守り抜きます。
国際相続
国外財産があると
どうなるの?
  • 海外財産
  • 海外在住
  • 国際結婚
相続財産が海外にある場合、手続きが複雑になります。国内財産の分け方も絡む紛争を総合的に解決します。
相続税
節税対策の
ポイントを知りたい
  • 税務調査
  • 税務訴訟
  • 相続税の
    還付
生前にどれだけ詳細にシミュレーションすることができたかで、相続税対策は決まります。遺言内容にも影響しますので、多方面からの検討をする意味でも弁護士兼税理士にお任せ下さい。