【生前贈与と書面によらない贈与の撤回】唐突な生前贈与と超過特別受益
[サブカテゴリ]:遺産分割
【生前贈与と書面によらない贈与の撤回】唐突な生前贈与と超過特別受益
相談者からの相談内容
弟が亡くなり、弟の嫁と私が相続人です。 遺言はなく、弟が残した自宅不動産について、遺産分割協議をすることになりました。 義妹が自宅に住んでいるので、不動産を義理の妹が取得するのは仕方がないと思っていました。 自宅以外にはほぼ相続財産は有りません。 そこで遺産分割の焦点は代償金の妥当性に絞られ、その点について協議を重ねてきました。 義妹は当初、800万円を提示してきたのですが、私は呑みませんでした。 さらなる協議を続けていたところ、義妹からなんと急に前言を翻す通知が来ました。 不動産を生前贈与でもらっているので、登記移転手続きに協力せよとのことです。 自宅を生前贈与する契約があって、登記移転の書類があるので、生前贈与は成立しているとの主張です。 生前贈与があったのならばどうして今まで、遺産分割の代償金の話をしてきたのか。 かなり不自然なので証拠がでっち上げられている気もしますが、登記移転の書類をみると筆跡は弟のもののようです。 もしも生前贈与があったとしても、特別受益に当たるのではないかと思います。 私は正当な代償金を受け取ることができますか。- 弁護士からの
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生前贈与は撤回できるものか?「書面」の意味
生前贈与が唐突に言いだされた経緯として、納得できる言い分はあるのでしょうか。
例えば自宅の引出においてあり、書類に紛れていたなどです。
ただいずれにせよ筆跡は弟さんのもので間違いないようなので、唐突に言いだされた点はさておき、偽造はないものとして話を進めます(この点について争えるのであれば、書面の真正を争う裁判として訴訟を進めることになります)。
生前贈与については、書面によらない贈与が撤回可能である以上、書面によらない贈与で履行が完了していないものであれば、相続人として撤回することが考えられます。
自宅不動産は登記がまだなので、履行が完了していないという主張も可能であると考えられます。
そこで撤回ができるかどうかについては、贈与が書面によるものかどうかを判断することになります。
書面によらない贈与の「書面」は典型的には贈与契約書なのですが、贈与契約書に限りません。
外部に贈与意思が何らかの形で表明されていれば、「書面」に当たるとされます。
登記移転の書面についても、弟さんの筆跡で署名されている以上、「書面」に当たるとされる可能性があります。
そうなると書面による贈与契約になるので、撤回はできません。
では撤回はできないとなると、特別受益の主張をして生前贈与された自宅不動産の分を持ち戻して遺産分割協議をすることができるかですが、結論からするとこの場合は難しいです。
義妹さんが超過特別受益者に当たるからです。
義妹さんが受けた特別受益が、本来の相続分を超えています。
一部の相続人が法定相続分以上の生前贈与を受け取った場合、この相続人のことを「超過特別受益者」といいます。
超過特別受益者は、法律上、新たに財産を取得することはできない(民903条2項)とされる一方、超過分を返還する必要まではありません。
他の相続人が超過特別受益者に対して何らかの請求をできるのは、他の相続人の遺留分が侵害され、当該特別受益が遺留分減殺請求の対象となる場合に限られます。
ご相談者は兄弟としての相続分を有するにすぎず、兄弟には遺留分がありません。
したがって超過特別受益者である義妹さんに請求することができません。
ここがポイント!
書面による生前贈与か?超過特別受益者か?
書面による贈与の「書面」は外部に贈与意思が表明されているかどうか。
超過特別受益者には移駐分減殺請求のみ。
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