海外在住のため、遺産相続の話し合いを進めるのが難しいうえ、共同相続人の1人が話し合いに応じず、膠着状態に陥っている。
[サブカテゴリ]:不動産相続
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海外在住のため、遺産相続の話し合いを進めるのが難しいうえ、共同相続人の1人が話し合いに応じず、膠着状態に陥っている。
相談者からの相談内容
15年前に亡くなった父の遺産分割がまだ解決していません。 父は、16年前に金融機関から約8億円の借り入れをして、横浜にマンションを建設しました。その1年後に父は亡くなったのですが、現在に至るまで遺産分割協議もまともにできておらず、マンションは相続人である母、兄、私の3人の共有名義となっています。 私は、夫の仕事の関係でヨーロッパ在住なのですが、母と兄はこのマンションに住み続けています。 兄は、長男の自分が全ての財産を引き継ぐべきだと主張し、全く話し合いに応じる意思が内容でしたので、母と私で遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てました。ところが、兄は調停期日に毎回欠席し、全く手続きが進まなくなってしまったので取下げました。 マンション完成当初は、兄も積極的にマンション管理をしていましたが、私たちが遺産分割調停を申立てたころから、親族間の関係が悪化し、マンション管理も疎かになり始め、空室が多くなりました。借入金の返済を家賃収入から賄うことができなくなり、所有ビルを売却するなどして凌いできましたが、それも限界にきています。 私としてはマンションを早期に売却して、借入金を完済してしまいたいと考えていますが、兄が納得しません。今後母の相続も発生することになりますが、私の夫や子どもに影響が出ないか不安です。 これからどうすればよいのか、専門家である弁護士に相談したいです。- 弁護士からの
一言アドバイス - 「学ぶ」コーナーでまずは勉強 頃合を見計らって弁護士に依頼 状況によって弁護士に依頼 至急弁護士に依頼することが望ましい 今すぐ弁護士に依頼することが望ましい
- 今すぐ弁護士度
- 簡単に解決できる見込み やや簡単に解決できる見込み 解決できる見込みあり 解決するのがやや難しい 解決するのが難しい
- 解決難易度
海外にお住いの場合、他の相続人と遺産分割協議を行うことは困難。弁護士を代理人として遺産分割協議を進めることが重要
ご相談者が最も心配なさっているのは、ご両親の債務(負債)も相続することになり、その債務がご主人様やお子様に降りかかってこないだろうかという点でしょう。
マンション購入の際の借入債務は、お父様が亡くなられたことにより、ご相談者、お母様、お兄様に、法定相続分に従って相続されました。したがって、ご相談者は債務の4分の1を負担していることになります。そして、仮にお母様が亡くなられた場合、お母様が負っていた分の債務もご兄弟2人で2分の1ずつ(1人あたり4分の1)負担することになります。したがって、最終的には、マンションの残債務の2分の1をご相談者が負うことになります。
現段階において、ご相談者のご主人様やお子様が、法律上、マンションの債務を背負うことはありません。しかし、ご相談者ご自身が債務を負担することになりますので、債務を返済しなければならない場合には、事実上、ご家族への影響が出てくることになります。
ご家族に対する債務の影響を抑える方法ですが、現在ご相談者が負担されている4分の1の債務を消滅させることは、残念ながら困難といえます。それを前提に考えると、ご相談者とお兄様の間で、もう一度弁護士を入れて話し合い、早期にマンションを売却する必要があります。
もっとも、マンションの売却についてもなかなか進まないとのことですから、これ以上債務を負担しないようにすることが現実的な対策でしょう。仮にお母様が亡くなられた場合、お母様が負担されていた債務(マンションの借入債務の2分の1)が2等分されてご兄弟2人に相続されることになります。すなわち、現状よりも、債務の負担分が4分の1増加することになります。お母様のプラス財産とともに4分の1の債務を相続する場合に、相続財産が全体としてマイナスになるのであれば、お母様からの相続を放棄することをお勧めいたします。
相続を放棄すると、プラスの財産もマイナスの財産も、一切の遺産を相続しないことになります。ですので、お母様のプラスの財産が少ないのであれば、マンションの債務の4分の1を新たに相続しないように、相続放棄する方が得策ということになります。
もっとも、相続放棄は、被相続人が亡くなってから3カ月を経過すると行うことができません。そのため、現時点では、お父様からの相続を放棄することは既にできなくなっています。また、仮にお母様からの相続を放棄する場合、3カ月はあっという間に過ぎてしまいますので、期間によく注意する必要があります。
海外にお住いの場合、他の相続人と遺産分割協議を行うことはなかなか困難です。そこで、弁護士を代理人として遺産分割協議を進めていくことをお勧めいたします。一度、弁護士に委任をすれば、その後はご本人が海外に滞在されていても、弁護士が代理人として協議を進めていくことになります。また、相続人同士ですと、これまでの話し合いにおける感情的な擦れ違いなどもあり、なかなか話がまとまりにくいこともあります。第三者である弁護士に依頼する方が、話し合いが円滑に進むことも多くあります。
マンションの売却については、遺産分割協議の内容のひとつとして、具体的な方法、額、分配割合等について交渉していくことになります。この交渉は、まさに弁護士が行うことになります。
現時点でご相談者が負っているマンションの債務をこれ以上増やさないことが重要です。この問題は早期に解決する必要がありますので、遺産分割に精通した弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。
ここがポイント!
他の相続人と遺産分割協議を行うことが困難な場合、弁護士を代理人として遺産分割協議を進めましょう。
海外にお住いの場合、他の相続人と遺産分割協議を行うことはなかなか困難です。遺産分割のために必要な書類を準備することも難しいでしょう。スムーズに相続手続きを行えるよう、弁護士を代理人として遺産分割協議を進めていくことをお勧めいたします。
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