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Q25.生前に自社株を贈与する場合の注意点[POSTED]:2019-10-15
贈与税申告や法人税申告書との齟齬をなくさないと相続税の税務調査で名義株扱いされるリスク
自社株式は相続において厄介な存在である
遺産分割においても評価が問題になる。
そもそも誰が相続するかについて、代理人がついている遺産分割協議においては、合理的に話を進めることもできようが、代理人がついていない場合などは、経営に全く関心もない相続人が嫌がらせのために相続権を主張することもある。
自社株式は相続税においても問題になる。
自社株対策として生前に息子に株式を贈与していた。
ところが自社株式の贈与について贈与契約書も作成していない。
こんなケースは珍しくない。
もともと自社株式は上場株と異なり、財産として、動産として、有価証券として、意識されていることは少ない。
身内で経営している会社なので、事業を始める際に、または増資といってもお金が足りなくなった際に、たまたまお金を持っていて融通してくれた人間が、株主として扱われているというのが実態である。
出資という法律行為も、なかなか家族間で法的意味そのままのとらえ方をされているわけではない。
株式を持っているという考え方も法律上の意味とは異なるとらえ方をされている。
だからこそ、株式の持ち主である株主が変更する際には、金銭の授受がない場合に、贈与契約がなければならないが、法律上の原則が守られていない。
対価の支払いも伴わずに株式が渡されていることになる。
法的には贈与がなければならないが、贈与契約を締結している意識もないので、贈与契約書を作成することもない。
相続税対策として、株式を子供に生前に渡して置き、相続財産から外すことがなされる。
ところが、対価の授受もなく、贈与契約書の作成もない。
贈与税の申告もない。
家族の間では有効に株主が変更されたと思っているのだが、のちに株主の帰属が問題になった場合、株主は依然としてあげたつもりになっている親のものであるという認定がなされる可能性がある。
株式の帰属が問題になる場面の1つは、会社の支配権をめぐる争いで株式数が問題になり、さかのぼって贈与の有効性が争われる場合である。
自分の株式数が実はもっと多いのであるとして、裁判をすることは多い。そのときに過去の贈与が有効かどうかが問題になる。
贈与契約書がないこと自体は事情の1つにしかならないが、贈与契約書がない場合には履行が終わっていない贈与として撤回をされるリスクがある。
そして履行が終わったかどうかについては、株券発行会社の場合は株式の引き渡しが履行にあたるとされる可能性があり、株券発行会社であるにもかかわらず実際には株券を発行していない会社の場合、引き渡しが終わっていない状態になる可能性がある。
つまり、会社支配権をめぐる裁判において、贈与契約がないことは場合によって、贈与の撤回を許容しうる事情になる。
贈与契約書の作成自体はたまさかの行きがかりで作成しなかっただけかもしれないが、株式の帰属に大きな影響を与えうる。
もちろん株式贈与時に贈与税の申告をしていたかどうかも大きな事情になるし、各種申告書等に記載してある株主構成の記載も贈与の有無の認定に影響する。
株式の帰属が問題になる場面のもう1つは、税務調査である
自社株式を贈与したとして、相続税申告における相続財産に入れていなかった。
これが申告漏れになるのかどうかが問題になる。
会社の支配権をめぐる裁判において問題になる場合は、ほかの事情で贈与契約書がないことが不問に付されることもあるが、相続税の場面ではやはり税務署との関係で贈与税を申告していない場合は、贈与の有無の認定で大きな要素になる。
税務署との関係では贈与があれば贈与税を申告することになるのだから、統一的に考えて、贈与税の申告がなければ贈与がない、贈与がなければ相続財産として申告しなければならない。
税理士が関与している会社において、贈与契約書を作成せず、贈与税の申告をしていないケースもあった。
もともと家族間での財産のやり取りにおいて、贈与であるとしてもいちいち贈与契約書を作成することは、通常の感覚からすればむしろ異例なのかもしれない。
書面によらない贈与は、履行が終わっていない場合に撤回できると法が定めている以上、贈与契約書が存在しない贈与契約も法は認めている。
ところが会社の株式は、社会の公器という会社の側面からなのか、すでに見てきたように、贈与契約書を作成しないことのリスクが大きい。
会社支配権をめぐる争いが勃発した場合の帰趨にも影響を与え、相続税の申告においても申告漏れにつながるミスになりうる。
会社といっても非上場会社の多くが家族経営である以上、しっかりと手続きを踏むという意識を持つ契機がなかなかないのかもしれないが、少なくとも株式の帰属が変わる場面では、しっかりと手続きを整えておくことが肝要である。
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