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Q5.生命保険の活用方法[POSTED]:2019-07-05
相続税における節税と特定の相続人に対して相続させない遺言を書いた場合の遺留分対策
相続ビジネスで頑張っている事業会社のなかに、生命保険会社がある。
生命保険を相続に活用しましょうと呼びかけ、各種セミナーも開き、集客をしている。
生命保険は相続においてどのような役割を果たすのであろうか。
その前に生命保険に関する相続における複雑な扱いについて解説をする必要がある。
ここを理解してもらうのがなかなか難しい。
生命保険の受取金は相続において特殊な扱いを受ける。
被相続人が契約している生命保険において、被相続人が被保険者、相続人が受取人としてそれぞれ指定されているケースを考える。
生命保険の受取金は生命保険会社から受け取るので、被相続人の財産を直接に相続するわけではない。
相続財産とは、被相続人の財産を相続するときの対象となる財産であるから、生命保険の受取金は民法上、相続財産そのものではない。
この理解は重要である。
ところが実際には被相続人の死亡をきっかけにして金銭が支払われるので、相続税法上では、相続財産類似のものとしてみなし相続とされ相続財産同様に課税対象として扱われる。
民法上は相続財産ではないにも拘らず、相続税法上は相続財産としてみなされる。このねじれ現象について、あまり理解していない相談者の方もいる。
被相続人が契約者となり相続人が受取人となっているケースを考えたが、被相続人が契約者となり、相続人が被保険者、受取人となっているケースでは、被保険者が存命で保険事故(保険金の支払いをしなければいけない事実)が未発生なので、生命保険の受取金ではなく、生命保険の契約者たる地位が相続財産になる。
この場合の生命保険の契約者たる地位をいくらで評価するか、つまり相続財産の評価額は、解約返戻金相当になる。
生命保険については、民法上と相続税法上のねじれ現象に加え、契約主体や被保険者、受取人次第で民法上の相続財産や相続税における相続税評価額が変わってくるというトリッキーな事情がある。
相続における生命保険の役割だが、よく言われるのは節税効果である。
生命保険の受取金については「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある。
この点を売りにした生命保険のセミナーも多い。
生命保険の商品によっては、解約返戻金の評価を一定年数は極めて低く抑えるものもある。被相続人を契約者、被保険者を相続人とした契約の場合、相続財産は契約者たる地位となり相続税における評価額は解約返戻金相当になる。解約返戻金が低廉になっているタイミングで相続が発生すれば、相続税評価額が低くなる。
難しい話になるが、生命保険と節税についてはこのような商品もある。
生命保険の受取金は納税資金に利用できる。
相続税の納税は通常、相続発生後10月以内に行う必要がある。遺産分割でもめてしまうと、預金を引き出すことができずに納税ができない。
ところが生命保険の受取金が利用できれば、遺産分割がまとまっていなくても納税資金が調達できる。
相続税対策は相続税額を低くすることだけではない。
相続税の納税に対応することも相続税対策である。
生命保険の節税効果はあくまでも相続税の納税義務が発生するアッパー層向けの話だが、あまねく広い層に関係するのが生命保険の遺留分対策としての利用である。
財産額に関係なく、こちらの方が大切なのかもしれないが、遺留分対策というのはいわばもめ事対策である。相続紛争を前提にした話はしづらいので、セミナーなどではあまり強調されていない。
生命保険の受取金は相続財産ではない旨、既に述べた通りである。
生命保険に加入し、掛け金をかけることで、相続財産の現金は減る。
しかしその掛け金が相続発生後に転じる生命保険受取金は、相続財産とは扱われない。
相続税法上はみなし相続財産と扱われるものの、民法上は相続財産ではない。遺産分割においては民法上の扱いのみが問題になるので、生命保険受取金を受け取る相続人は、遺産分割における相続分とは別枠で生命保険受取金を受領することができる。
遺産分割において生命保険受取金は相続財産から除外される。
とすると生命保険受取金をいかに多く受け取っていようが、相続財産については1円も受け取ったことにはならない。
結果、遺留分を侵害するかどうかの判断においても、生命保険受取金は考慮されない。
極めて多額で相続財産のほとんどを占めるような額の生命保険受取金を受け取った場合は、遺留分侵害の有無を判断する場合に影響を及ぼす可能性もある。実際に過去の判例では、生命保険受取金が場合によって遺留分を侵害し得るとしたケースもある。
例外的なケースはさておき、生命保険受取金は遺留分対策として理容価値が高い。
遺言を書いて相続財産のほとんどを特定の相続人に相続させた場合、遺留分を侵害された相続人が遺留分減殺請求をしてくる。
相続財産としてではなく、生命保険の受取金として特定の相続人に財産を渡すことで、遺留分減殺請求を封じることができる。
特定の相続人を利するようなアドバイスになるからだろうか。
不思議とこのような生命保険の活用法が勧められているのは、寡聞にして知らない。
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